自分ゴトと地域を
カケルくらし
2017.03.09
地域活動から貢献していく
—本田さんは地域活動をする20以上の団体で役員などを務めていらっしゃるそうですね。地元の重要なお祭りの神輿作り指導もされていると聞きました。
本田さん:「かつて銅が採れた香春岳三の岳のふもとに、古宮八幡神社という神社が祭られています。そこは奈良時代から、宇佐神宮に銅の御神鏡を奉納していた神社です。御神鏡は、杉の葉葺きの御神輿で運んだと言われています。こうした杉葉葺神輿は全国でもここだけで、福岡県の無形文化財に指定されているんですよ。私はその葉を葺く指導をして技術を継承しているんです」
本田さん:「手先が器用で、昔から木工が好きなので、独学の趣味でいろいろおもちゃを作っていました。今はボランティア連絡協議会の活動で、子供たちに木工細工を教えているんですよ」
—若い時からずっとこうした地域活動をされていたんですか?
本田さん:「私は香春町の出身ですけど、農機具メーカーの営業職で32年会社勤めをしていて、地域活動を本格的に始めたのは定年退職してからです。会社では九州支店の営業マンだったので、駐在で宮崎に7年住んだり、鹿児島にも5年住むとか、町にいないことが多かったんですよ」
本田さん:「定年前には香春町に帰っていて、公民館長になったんです。町役場にいろいろ働きかけをしたり、本格的に地域活動を始めたのはその頃からですね。まず最初に取り組んだのが、子供たちの通学路の整備です。当時この坂はヤブぼうぼうで、向こうに見える田んぼが見えないほどでした。それではマムシやサルが来てあぶないから、草刈りをして安全な通学路にしたいと思いました」
本田さん:「でもただ草刈りしようと言っても誰も応援してくれないから、アジサイを植えて壁画もつくることにしました。そうして情操教育の事業として、子供や親たちと一緒に通学路をきれいにしていったんです」
—通学路も安全になって教育にもなるって、一石二鳥のナイスアイデアですね!それはパッと思いついたんですか?
本田さん:「そうです(笑)公民館長として月1回は何か行事をしようと思っていて。やっぱり人間が集まらないと交流が深くならないから、集まる機会を増やしていこうと考えたんですね。そうすれば子供も仲が良くなるし、親同士も交流できるし。そういうのが最初の取り組みでしたね。
他にも勤労者センターや運動公園の管理人をしたりして、地元に帰ってきてからだんだんと役場とのつながりができてきました。そうして今はいろんな役職が20以上になって。80歳になるので、若い人に任せて減らしていこうとしているところです」
移住者との関わりとまきこみ
—地域おこし協力隊の村井さんとも、よくお会いになられているそうですね。村井さんの印象はどうですか?
本田さん:「なかなかいい人だなと思いますよ。酒も強いし、あっさりしてるし」
本田さん:「実は地域おこし協力隊の募集計画にも最初から首を突っ込んでいたんです。地道に1人でも2人でも香春町に新しい人を増やしていけたらいいなという気持ちで。地域おこし協力隊の方は、春に来られたばかりで、まだどこから手をつけたらいいのか、という状態じゃないかと思うんです。でも2~3年するうちに方針ややり方がでてくれば、それでいいんじゃないかと私は思います」
—本田さんご自身はこれからどんな地域活動を考えているのですか?
本田さん:「2001年から桜の公園作りをずっと続けています。まだ未完成で、これを少なくとも4年以内には完成するように進めています」
本田さん:「その公園が完成すれば、宇佐神宮に奉納する御神鏡を鋳造した「清祀殿」や、銅を採掘した「神間歩」という坑道とかを周遊する散策ルートができあがるんです。広域公園をつくりたいんですよ。
あと水車小屋再生もしたいですね。昔は水車で石灰石を砕いて石の粉を作って、建築材にしていたんです。かつては15件くらいの水車小屋があったんですよ。それを再生できたらいいなと思って、町役場に要望書を出して提案しているんです」
本田さん:「公園づくりというのはもともとの目的ではなくて、このあたりが粗大ゴミの不法投棄地になっていたので、その対策をしたくて始めたことなんです。業者も大型トラックで捨てに来るようになっていて、冷蔵庫やベッドなどあらゆるものが捨てられていました。それなら道路の周辺を美しくしたら、不法投棄も無くなるんじゃないかと数人で話し合って、沿道を草刈りして桜を植えたのが始まりでした。
お金はどうしたかというと、区にもお金がないから、建設課から田川ライオンズクラブという社会奉仕団体にお願いをしてもらったんです。それで桜の苗木を1年に50本ずつもらえることになりました。そして地元の人から1口千円以上で賛助金を募金してもらって。あとは沿道の草刈りをやって草刈り賃を建設課からもらって、その2つの資金でやっていて、草刈りをしてくれる人のビール代とかお弁当代とかにしているんです。
そうして沿道に桜を植えきると、そこに続く耕作放棄地が竹ヤブになっていたので、この竹も切って桜を植えることにしたんです。桜はもう大きくなって、きれいに咲くようになっていますよ。子供に生態調査のワークショップをしてもらったら、蛍が3種類いて、トノサマガエルもいることがわかりました。だからこれからトノサマガエルがもっと住みやすい沼地も作る計画なんです。観光のためと、子供たちの教育のためですね。水車小屋も、水力発電した明かりで勉強もできるような教育施設として考えています」
—ご自身がやりたいことで地域にもいいことを、町役場をどんどん活用して取り組んでいるんですね。
本田さん:「あれをしてくれ、これをしてくれでは役場は全然手を出さないです。自分たちが率先してやっているからサポートしてくれるんですね」
本田さん:「だから移住される方についていえば、こちらから仕事を一方的に与えるのはあまり良くないなと思います。それよりも、自分が好きなことをやるために、みんなと接触して、自分で仕事を作っていくかたちの方が長続きするんじゃないかと思うんです。
こういう仕事はどうだろうとこちらが思っていても、その人に合うか合わないか分かりませんよね。だからこちらはヒントを与えて、移住者自身に仕事を目論ませるのがいいんじゃないかと思います。たとえばこのあたりは登山客が多いので、桜公園もそろそろできあがるし、登山客とか自然散策する方向けにお土産店を開くといいだろうなとか」
本田さん:「物事は人がいて進むのだから、自分の考え方だけではみんなはついてこないですよ。やっぱり話をして、1人ずつやりとりをしていくことです。するとこっちが考えていないことでも、別の人が考えてきて、ああしようこうしようとなってくるんです。だから人と接触するのがやっぱり一番大事じゃないかと思います。村井さんたちのような気さくな人が、どんどん入ってきてくれるといいですね」
—最後に、香春町への移住を考えている方にメッセージを頂けますか?
本田さん:「香春町には資源がいろいろあります。タケノコとか柿とか。この土地だったらタダで貸すよというところも多いから、たとえば鶏や豚を飼うにしてもそれなりに場所があります。
移住者の要望には、いろいろ応えられると思いますよ。香春町でやりたいことがあればこう手伝いするよと、地元の人は応援する体制はなんぼでもあると思うんです」